僕は漫画や映画など、物語を視覚的にわかりやすく表現したメディアや媒体が好きなのですが、皆さんはどうでしょうか?
こうした物語と絵の関係というのは、今に始まったことではなく遥か昔から存在していました。
宗教画や神話画なんてまさにそうですよね。
物語を文字を読めない人達にもわかりやすく伝えるためのイラストの役割を担っていたという事です。
そうした物語を扱った絵画作品の中でも、文学や詩などを絵画によって表現する流れが美術の歴史には存在しました。
それが今回の記事で紹介する「ラファエル前派」と呼ばれる画家たちの活動です。
では、ラファエル前派にはどんな特徴があって、どんな画家や作品が生まれたのかということを紹介していこうと思います。
日本人にも非常に親しみやすい文学的な作品が多いので、是非読んでみて下さい!
ラファエル前派の特徴とは?
ラファエル前派は19世紀の中頃に突然現れた芸術形式です。
型にはまった、重々しいアカデミー芸術が主流となっていた美術の世界で、それよりもずっと前の単純な芸術を再現するという試みが行われたんですね。
ラファエロやそれ以前の画家や作品などを再現しようとしたわけです。
ラファエル前派という名称はそういった理由からつけられたんですね。
若い画家によって結成されたこの活動の団体は「ラファエル前派兄弟団」と名付けられました。
このグループの中は
・ウィリアム・ホルマン・ハント ・ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
などの七人の画家で構成されていました。
しかし、当時のメディアはラファエロの名前を使ったこの一派を大バッシングしました。
ラファエロは画家の中でもトップレベルの存在だとされていたのに、若者がその名前を語っていたのですから当然と言えば当然かもしれません。
では実際に彼らがどんな画家だったのか、どんな作品を制作したのか見ていきましょう!
ジョン・エヴァレット・ミレイ
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829年6月8日 - 1896年8月13日)
ー年表ー
1840年:11歳でロイヤル・アカデミー美術学校に入学
1846年:ロイヤル・アカデミーで作品を初展示する
1852年:エフィー・グレイと結婚する
1855年:準男爵になる
1896年:ロイヤル・アカデミーの会長に就任
1896年:ロンドンで死去する。セントポール大聖堂に埋葬される。
ミレイは神童と呼ばれていました。
史上最年少でロイヤル・アカデミー美術学校に入学したほどです。
ちなみに、このロイヤル・アカデミー美術学校というのはロンドンに1768年に設立された王立芸術学校ですね。
また、若いころから発揮された非常に高いその技術は、ラファエル前派の特徴でもある精密な画風にも通じていると思います。
ミレイの初期作品は文学をモチーフにした作品が多いです。
有名なところで言うとシェイクスピアなどでしょうか。
「オフィーリア」などは日本でも非常に人気のある名画だと思います(下記一番上の画像)。
シェイクスピアの「ハムレット」を題材にした絵画作品です。
モデルは何時間も風呂に浸かったために風邪をひいてしまったというエピソードが残っています(笑)。
晩期になるとミレイの作風は変化していき、情緒的な絵が多くなりました。
またミレイは子供の絵を得意としていて、子供をモデルにした名作も多数残しています。
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828年5月12日-1882年4月10日)
ー年表ー
1844年:ロイヤル・アカデミー美術学校に入学する
1848年:ラファエル前派兄弟団の創設に協力する
1860年:エリザベス・シダルと結婚する
1862年:妻シダルが死去
1882年:53歳で亡くなる
ロセッティはラファエル前派の運動を牽引した存在でした。
横暴で変わり者ではありましたが、非常にカリスマ性があったようです。
ラファエル前派兄弟団はロセッティが考案したアイデアで、作品にはグループの頭文字である「PRB」というサインを書き入れていました。
初期の作品は全体的にロマンティックで中世の夢の中の世界を思い起こさせるものが多いです。
晩期には作風が変化し、女性の神秘的な面を追及していったようです。
フォード・マドックス・ブラウン
フォード・マドックス・ブラウン(1821年4月16日 – 1893年10月6日)
ー年表ー
1821年:家族がベルギーに移り住む
1837~39年:アントウェルペンで修行する
1840年:いとこのエリザベス・ブロムリーと結婚
1845~46年:ローマに滞在するが、妻が亡くなる
1853年:エマ・ヒルと再婚する
1855年:代表作でもある「イギリスの見納め」が完成
1861年:ウィリアム・モリスの会社で共同創設者になる
1878年:マンチェスター市庁舎の壁画を描き上げる
ブラウンは正確に言うとラファエル前派の正式なメンバーではありませんでした。
しかしメンバー達と親しく交流し、彼らの思想に共感していました。
ロンドンに滞在していたころには、イギリスの史実からインスピレーションを受け、それらに基づく作品を制作しました。
先ほど紹介したロセッティはブラウンの作品に感動し、彼に教えを乞いました。
その後二人は長く親友であったそうです。
彼の代表作である「イギリスの見納め」は逆にラファエル前派の影響を強く受けて制作されました(下記一番上の画像)。
また非常に細部にこだわった精密な作風もラファエル前派と共通した特徴だと言えるのではないかと思います。
まとめ
今回は物語的で技術の高さが特徴的な「ラファエル前派」について解説してみました。
ラファエル前派は僕も結構好きな絵画作品が多く、実際に何度も展示に足を運んだりもしました。
この記事で少しでも興味を持ていただけると嬉しいです。
ではでは今回はこの辺で!
また別の記事でお会いしましょう!
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