いきなりですが、皆さんは美術館へ行って絵を観る事はどれくらいあるでしょうか?
美術館で古典絵画を観ていると、たまにギョッとするくらい精密に描き込んでいる絵を見かけることがあります。
そしてそうした作品のほとんどは今回の記事でお話する「北方ルネサンス」と呼ばれる時代の絵画作品であることがよくあるんですね。
この時代は美術の歴史にとっても非常に重要な時代であり、また数々の巨匠が世に作品を送り出していきました。
そんな北方ルネサンスについて
・どんな画家がいるの?
・どんな作品が作られたの?
という疑問にお答えしていこうと思います。
是非最後までお付き合いいただければと思います。
油絵は北方ルネサンスから誕生した!
14世紀~15世紀の頃に、ヨーロッパ北部で活動していた画家たちは今までより更に写実的に世界を描きだそうとしていました。
解剖学、遠近法などの研究も盛んに行われ、絵画の技術がどんどん改革されていった時代なんですね。
そうして研究が進んでいくと、グラデーションや細密な描写を可能にして、よりリアルに描くことのできる油絵の具が開発されました。
関連記事⇒油絵とは一体何?絵の具のことから有名な絵画まで徹底解説します!
また15世紀の絵画作品のほとんどが祭壇画だったのですが、16世紀に入ると北方ルネサンスの画家たちは新しいテーマで絵を描くようになります。
人物や物語の存在しない、ただの風景画や仕事や遊びに夢中になる農民などが描かれるようになったんですね。
ではさっそく実際にどんな画家がいて、どんな絵を描いていたのかを観ていきましょう。
ヤン・ファン・エイク
ヤン・ファン・エイク(1395年頃 – 1441年7月9日)
ー年表ー
1930年頃:マーストリヒト近郊のマーセイクにて生まれる
1422年:ヤン・ファン・バイエルン宮廷で仕える
1425年:リール、ブリュージュへ、フィリップ善良公の従者として旅へ出る
1426年:「ヘントの祭壇画」制作中の兄、ヒューベルトが死去
1428~29年:フィリップ善良公から内命を受けてポルトガルへ旅に出る
1432年:「ヘントの祭壇画」を完成させる
1432年:代表作「アルノフィーニ夫妻」を制作
1441年:ブリュージュにて死去
ヤン・ファン・エイクは北方ルネサンスを代表する画家です。
彼は美術の歴史の中で、油絵の具を絵画に使うための技法を考案した最初の画家だと言われています(正確に言うと、油絵の具自体は木材の着色などに以前から使われていた)。
特に油彩画において重要な技法のひとつである「グレーズ」を開発したことは大きな功績です。
「グレーズ」という技法は薄く透明な絵の具を何層も重ねて、深みのある鮮やかな色彩と緻密な描写を可能にした技法の事です。
関連記事→油絵の技法は数知れず!11個の古典技法から現代の表現まで解説!
作風については、非常に繊細でディティールにこだわった表現方法を採っています。
服の細かいしわ、皮膚のしわ、髪の毛や髭も丹念に観察し描き込んでいます。
実際に本物を観ると、その尋常ではない集中力とこだわりに驚いてしまうと思いますよ。
ピーテル・ブリューゲル
ピーテル・ブリューゲル(1525年-1530年頃生 – 1569年9月9日没)
ー年表ー
1525年-1530年:この時期に生まれたと言われる
1551年:アントェルペン画家ギルドの親方に認定される
1552~54年頃:イタリアを訪れる
1555年:ヒエロニムス・コックのために銅版画の下絵をデザインする
1563年:結婚。ブリュッセルへ
1565年:月暦画連作の依頼を受ける
1569年:ブリュッセルで死去。
ピーテル・ブリューゲルは田舎で暮らす農民たちを描いた画風で広く知られています。
それ以前にはこういったテーマで絵画が制作されることはほぼ無く、非常に画期的な作品であったと言えます。
しかし本人は田舎の人間ではなく、都会育ちの画家でした。
ブリューゲルの若いころについてはあまり明らかになっていませんが、画家としての仕事はアントウェルペンやブリュッセルで行っていたようです。
また、ブリューゲルは他の北方画家と同じようにイタリアへ旅に出ました。
しかし非常にユーモアあふれる群像的な風景は、当時のイタリアルネサンスの芸術の方向性とは真逆を行くものでした。
ヒエロニムス・ボス
ヒエロニムス・ボス(1450年頃 – 1516年8月9日)
ー年表ー
1450年:スヘルトーヘンボスという画家一族に生まれる
1474年:文書で初めてボッスの名前が言及される
1480年頃:「愚者の治療」を完成させる
1504年:現存していない「最後の審判」の制作依頼を受ける
1516年:スヘルトーヘンボスで死去。この頃にボスの評判がヨーロッパへ広まる。
1517年:記録上にはじめて代表作の「快楽の園」が現れる
この時代としてはありえないほどの幻想性を持った作品を描いた画家です。
後のシュルレアリスムと紐付けされるほど、時代を先取りしていた画家と言えると思います。
何ともおそろしい怪物や、何を意味しているのか判断に困るほどのビジュアルを持った世界を描きました。
またボスの人生については謎も多く資料も少ないのですが、信仰深いキリスト教徒であったことは明らかになっています。
ブリューゲルなどにも大きい影響を与えていましたが、死後には長い間忘れ去られていました。
20世紀初頭に再評価され始め、その作品群は数多くの人々を魅了しています。
まとめ
今回の記事では、北方ルネサンスについて有名な画家や特徴について解説してみました。
この北方ルネサンスでは、非常に緻密、そしてユーモアにあふれ幻想的な作品が多く生まれました。
眺めているだけでも発見や驚きがあって楽しいのではないかと思いますよ!
ではでは今回はこの辺で!
また別の記事でお会いしましょう!
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